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講孟余話 序
【2011/08/29 06:51】 エッセイ
吉田松陰の幾多の著述中、最大のものである講孟余話(当初は講孟箚記)の序に、素晴らしい文が書かれているので、抜粋して書いてみる。松陰の思想を識るには、この講孟余話と書簡集を読むとよいとは、大方の研究者の薦める所のようである。それに従って、その「序」を記して見る。
講孟余話 


「道は則ち高し、美し。約なり、近なり。人徒らにその高く且つ美しきを見て以て及ぶべからずと為し、而も其の約にして且つ近く、甚だ親しむべきを知らざるなり。富貴貧賤、安楽艱難、千百前に變ずるも、而も我れは之を待つこと、一の如く之れに居ること忘れたるが如し。・・・・・・孟子は聖人の亞なり、其の道を説くこと著名にして人をして親しむべからしむ。・・・・・・然るに富貴安楽は順境なり。貧賤艱難は逆境なり。境、順なる者は怠り易く境逆なる者は勵み易し。怠れば則ち失ひ勵めば得るは、是れ人の常なり。吾れ罪を獲て獄に下り、吉村五明・河野子忠・富永有隣の三子を得て相共に書を讀み道を講じ往復益々喜びて曰く、「吾れ諸君と與に其の境逆なり、以て勵みて得ることあるべきなり」と。遂に孟子の書を抱き、講究讋磨して以てその所謂道なるものを求めんと欲す。司獄福川氏も亦来りし會して善しと称す。ここに於て悠然として楽しみ莞然として笑ひ、復た圜牆の苦たるを知らず。遂に其の得る所を録し、講孟箚記と為す。夫れ孟子の説は固より瓣を待たず。・・・・・・今乃ち諸君と悠々學を講じて以てその幽囚を楽しむを得る者、寧んぞ以て對揚する所を思はざるべけんや。安政乙卯秋、二十一回藤寅これを野山獄北房第一舎に書す。」(全集第三巻:11頁)

此れを、意訳してみると大略以下のようになる。
人の人たる道は、高く美しく、また簡約で身近なものである。人々は、その高く美しい面のみを見て、自分には及びがたいものと思い、これが親しみやすいものであることを知らないのである。自分は富貴貧賤、安楽艱難など身の上がさまざまに変化しても、ただ一つの態度でどんな境遇にいても、これを忘れたようである。 孟子は亞聖と呼ばれ、彼が道を説くこと誠に明快で、人々が道に親しむべきと知らしめた。・・・・・・であるから、それを考えてみると人々が富貴や安楽は順境で、貧賤や艱難は逆境である。人間は、順境にあっては怠けやすく、逆境にある時は勵みやすい。怠惰は道を失い、勵むと道を得られるというのは、人の常なるものである。私は米国密航に失敗して、其の罪科でこの獄に入れられたが、吉村五明・河野子忠・富永有隣の三人の友人を得て、一緒に書を讀み、人の道を講究しようとお互いに意見交換して益々喜びとなった。そして曰く「私も皆さんも與に逆境にある。これをもって勵むことで道を得られるだろう」と。そうして、遂に『孟子』の書を手にして、研鑽して勵み、彼の言う「道」を求めたいと思う。司獄の福川氏も参会して「それは善いこと」と言ってくれた。そこで私は悠然として楽しみ、莞然として笑い、獄中の辛さも感じなくなった。その研究成果を記録して『講孟箚記』と名付けた。この孟子の説くところがどんなものか語るまでもない。・・・・・・今、諸君と共に、この獄中で悠然として学問を磨きながら、幽囚での生活を楽しめるのは、藩主のありがたい命令や福川氏の好意に応えて成果を挙げる道を考えなくてはなるまい。安政乙卯の秋、二十一回猛士藤原寅次郎、この文を野山獄の北房、第一舎に記した。

普通の人物なら、投獄に気落ちするところだが、松陰は逆に入獄者の仲間と、孟子を勉強しようしているのである。そして、これが「獄中教育」となり、後の松下村塾へと連なってゆくのであるから、松陰という人物の非凡さを知るべきであろう。このことが、際限の定めない出獄の契機にもなった。当然、司獄官の福川犀之助も門弟の立場を取ったくらいだから、藩政府の印象が好転したことは推測される。
しかも、この文意は誠に含蓄なり、味わうべきものが多い。現在の我々も、この精神に学ばなければならないと思う。後年、松陰は「志士」を自認し、堅固な志と、それに基づく国難の打開策を模索する立場を貫くが、常に生命の危険と隣り合わせであった。「死」に対する考え方が、常人と次元を異にし、所謂「士道論」に生きた人物であった。
「至誠」に象徴される松陰ならではと、印象されるのは私だけではあるまい。
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