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『吉田松陰』閑話休題
【2012/03/19 22:28】 エッセイ
『吉田松陰』閑話休題

吉田松陰に取り組んだのが、2003年春であったから、思い起こしてみると9年が経過したことになる。

田中彰著の『吉田松陰』(変転する人物像:中公新書)を手掛かりに、研究書、関連書を片端から読破した。
吉田松陰 田中彰

私の場合には、時に精読、乱読、速読ともいえる時もあったが、繰り返し、繰り返し読んだ。

大変ありがたいことに、その当時ミネルヴァ書房から「日本評伝選シリーズが刊行され、その第一弾が『吉田松陰』(海原徹著)-身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも・・・・・・が発売され、新宿の紀伊国屋まで購入にいったことから本格化した。
ミネルヴァ書房の編集者の談では、この『吉田松陰』が最高の販売実績をあげているとのことである。
これは、松蔭大学の「吉田松陰論」の指定テキストに決めた時に、相談して三冊寄贈してもらったときに伺った話である。
吉田松陰の衰えぬ人気ぶり、国民的支持が根強いものであることを、実感させる話である。
内心、大変嬉しかった。
吉田松陰の支持者は、概して堅実派の人生を歩もうとする人々が多いようである。
吉田松陰入門23.3.25


そして、徳富蘇峰、玖村敏雄さんの水準の高い一連の研究書を読んだ。
上記の三冊を何度繰り返して読んだことか。今でも時々紐解くことが多い。
松陰全集も普及版、大衆版、定本版と順次購入した。
廣瀬豊の『吉田松陰の研究』や奈良本辰也さんの『吉田松陰』、福本義亮さんの大著『吉田松陰の殉国教育』や古川薫さんの松陰本、下程勇吉さんの大著『吉田松陰の人間学的研究』、海原徹さんの、通称四点セット(テーマ別の松陰研究書)や関連の研究書などなど、二百冊を超す。


吉田松陰、奈良本辰也24.3.25
さて、これらを読んでいく中で[下田蹈海](徳富蘇峰、吉田松陰:岩波文庫、百頁)なる言葉が妙に「こだわり」として深い意味があるように思えて、何であるか?と疑問が残った。
自賛肖像画の賛に[三分盧を出づ、諸葛已んぬるかな、一身洛に入る、賈彪安くに在りや。心は貫高を師とするも、而も素より立つる名無く、志は魯連を仰ぐも、遂に難を釋くの才に乏し。読書功無し、朴學三十年、滅賊 計を失す猛氣二十一回。」が妙に、悲しく、疑問と共に私の心に響いて残った。
玖村敏雄著 吉田松陰の思想と教育24.3.25


その頃、この自賛自画像がオークションに出ているとの情報を得て、複製画のあることを知る。
三年位自力で購入機会を探しあぐねるも、遂に機会に出逢えず、熟慮の結果、萩市の選出国会議員を思い立ち、調べたらありがたいことに当時、文部科学大臣を務めていた「河村建夫・衆議院議員」が選出地区であることを知った。

すぐに、事務所とアドレスを調べて強い購入希望の思いを綴り、依頼のメールを送信した。
趣味でなく、教育の場で使いたい旨を記してご協力下さいと、長文のお願いであった。
しかし、待てども返信なし。やはり、直接事務所を訪問してお願いしないといけないのかな?と思い始めた頃、返信の郵便が届いた。
そこには、購入方法や扱い業者、その他関連の諸情報が紹介されていた。
直ちに購入相談に入り、『杉家本』といわれる自賛自画像が購入出来たのであった。
願えば叶うとは、こういう事かと思いながら、早速河村大臣に、お礼と報告の手紙を書いた。


これには後日談があって、私からのお願いを受け取って文部大臣はすぐに「野村萩市長」に協力の調査依頼をしたとのことであった。
国士舘大学での「松蔭学の提唱」のシンボジウムがあった折、パネリストとして参加された野村興児・萩市長が参加者質問を受けた時、私の質問への回答の時に語ったことで判明したのであった。

そして、この自賛自画像の「賛」と、徳富蘇峰以下の研究書に使われる「下田蹈海」の疑問を解くべく、格闘が始まる。
「諸葛亮」や「貫高」、「賈彪」や「魯連」を調べるが魯連が難解であった。
松陰の文には「簡略化」が多く使われていて、魯連は「魯仲連」の名前の略した書き方なのであった。
江戸期の私的文書は、これが多いので注意を要する。

松陰蹈海の図24.3.20



さて、今日はこの「魯仲連と下田蹈海との関連を書きたい。

①まず、三省堂から刊行されている『新明解 四字熟語辞典』(1898年2月1日、初版)の百頁に「仲連蹈海」の項目がある。

意味:魯仲連が、秦が天下を統一したら東海に身を投げて死ぬ積りだといったという故事。

「仲連」は中国戦国時代末期砕のひと。他人の困難を助けるのを好み、世俗を超越していて仕官しなかった。

「蹈海」は海に身を投げて死ぬこと。「蹈」は足でふむ、ゆく、あるくの意。

『蒙求』(もうぎゅう)の一句。 注意:「蹈」は「踏」と通用されているが別字。「海」の旧自体は「海」。

故事:魯仲連が趙の国に行き、秦軍に囲まれたとき、非道の国である秦が帝となって、天下にあやまった政治をおこなうのならば、自分は東海に身を投げて死ぬつもりだと云った故事から。<出典:「史記」魯仲連伝から。>

② 次に、大修館書店から刊行されている漢和辞典の『漢語林』(昭和62年3月1日、初版)の969頁【蹈】(7125)を紐解くと、漢音でトウ(タウ)、呉音でドウ(ダウ)と読む。意味は ふむ。足でふみつける。行く。歩く。渡る。行う。守る。従う。足ぶみする。こおどりする。うごく。悼む。舀はぬきだすの意味。足を上にぬき出すの意味から、足ぶみするの意味を表す。
[蹈海]:海に身を投げて死ぬ。高潔な節操をいう。
秦に帝号を奉ろうとした者があるのを聞いて、魯仲連が憤慨して、秦がもしも帝となったら自分は東海に身なげして死のう、といった故事。<史記・魯仲連伝>  梅を渡ること。危険を犯す例え。

③ 次は、【魯仲連】の調査であるが、まず、大衆版の吉田松陰全集の第8巻29頁、安政五年正月九日付で清水圖書宛の書簡に出て来る。その頭注によると、戦国斉の人、高踏して出仕しなかった。
魏は新垣衍を趙に遣わし、秦王を帝と尊称させようとした。
新垣衍と魯仲連が会見した時、仲連は「彼肆然として帝たらば、余は東海を踏んで死せんのみ。
吾れ之が民と為るに忍ばざるなり。」と言った。<史記・魯仲連伝参照> とある。
因みに、宛先の清水圖書(ずしょ)とは萩藩の大組士で、嘉永三年(1850)松陰西遊の時には長崎聞役で、松陰が信頼していた前田孫右衛門らと親しく、正義派の代表的藩士とある。<吉田松陰撰集459頁参照>

④ 次に吉田松陰撰集の魯仲連脚注説明では次の如し。「戦国時代の斉の雄弁家。義侠心が強く、趙と魏の王に協力し秦と抗戦した。終生高踏して出仕しなかった。」そして、魏の客将軍で、秦が趙を攻撃していた時、魏王が趙に新垣衍を遣わして「秦の攻撃をやめさせるには秦王に皇帝の尊号を献上するのがよい」と趙王を説得させようとした。
その際、偶々趙に居合わせた高節の士である魯仲連は、趙にとって屈辱的なこの提案を趙にとりつがせなかった。この新垣衍の策は秦の強大さをを恐れた結果による政策である。

⑤ また、インターネットで「仲連蹈海」の意味
節操を固く守る例え。仲連即ち「魯仲連」は戦国時代のの人で、【蹈海】は海に入水して死ぬの意味である。斉の魯仲連が、「非道な國である秦の昭王がもし天下をせいするのであれば、この仲連は東海を蹈んで(身を投げて)死ぬだけである」といった『史記』の魯仲連伝の故事からの語である。この出典は『蒙求』とある。


以上、私の8年以上に及ぶ疑問が、これで大体氷塊した。「下田蹈海」と「志は魯連を仰ぐ」というこの二つがずっと解けない謎として残っていたのである。
このきっかけは、嘉永六年七月二十八日の兄梅太郎宛書簡にある「夷人よりの書幾重復讀仕り候ても一として允許せらるべき箇条之れなく、若し是れが允許ある様にては天下の大變、東海を踏みて死するの外之れなく候・・・・・・」の解釈を、友人から問いかけられ、正確に答えられなかったことから、調べ盡したのである。
これだけの調査期間に三日を要した。

このきっかけを与えてくれた「山崎隆さん」とは、毎月に一度お会いする機会があるが、読解力があって、ポイントをつかむのが優れている方である。川越市在住だが、一献の席となると二人で夢中になって、松陰の研究に関する話題で持ちっきりになる。さながら共同研究者のごとくである。

なお、この書簡には『吉田松陰の手紙』と題して、長州出身の作家であった河上徹太郎の本があり、この百八十頁には「東海を踏みて死」(斎の魯仲連が秦の天下になったら東海を踏んで死なうといった故事による)と但し書きがついていた。
一度読んでいたらしく、朱引き線がひいてあるのだが、記憶に残っていなかった。
でも、清々しい気持ちで、達成感を覺える。
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