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『留魂録秘話』
【2013/06/04 00:24】 エッセイ
「数奇な運命」を辿った『留魂録』

昨年、永冨明郎さんが『遥かなり三宅島』という本を刊行された。
この留魂録には以下のような特殊なドラマチックな事情がある。

留魂録24.3.25


「事実は小説よりも奇なり」ではないが、安政六年十月十六日に吉田松陰は、評定所で「口上書」への署名(書判)を求められた。江戸期の裁判の経緯で、松陰が被告として供述したことに確認を求めるものであったが、今日でいう権力の濫用のようなものであったようだ。
松陰の言葉では「権詐」となっていて、裁く側の論理で自供していない内容が書かれていた。
これをめぐって松陰と奉行の論争(辯争)となったが、多少の斟酌はあったものの大意は変らなかった。
だから松陰は「末文の改まらざるをみれば矢張り首を取るに相違なし」と判断し、死罪を予測した。以後、十日間は「身じまい」の準備に追われる。

親族に宛てた書簡『父叔兄宛』は涙なくして読めない程に、読む者をして心を打たれる。そして、門下生に宛てた『諸友に語ぐる書』や遺著となった『留魂録』が書かれる。
吉田松陰とその門下25.5.6


この最期の十日間の松陰の生き方は、誰も真似ることができない。
死の予感を思う時、人は『死の恐怖』に打ちひしがれ、気力が失せてしまうのであるが、吉田松陰は決してそうではなく、非凡な精神力と、己の信念である国家への奉仕に対して何等疾しい思いがなく、一人の国民として「日本国」のために精一杯尽くそうとして、幕府権力に曲解され、それが自分の「至誠」が足りなかったと自戒している。この心が後世に生きる人々に感銘を與え続けてやまないのである。



そうして斬首の前日に『留魂録』を二日間かけて二通を書き上げた。ほぼ五千字に及ぶ「門下生宛の遺書」である。
『身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留め置かまし大和魂』で書きはじまる、この遺書は尋常ではない。
これを読む門下生に奮起を促している。
教育の極限は死をも避けずに、身を以て教えた吉田松陰の教師としての人生の在り方に、感化されない門下生はいなかった。この「遺書」は獄中で書き上げられた。そして、長州人に手渡すことを託されたのが「牢名主」であった沼崎吉五郎であった。
彼は殺人の罪で、松陰から託された時は「遠島」即ち「島流し」で三宅島に「流刑」が確定していた福島藩士である。

本来は「伝馬牢」の「牢名主」として牢屋のなかでのボスとして辣腕を振るっているはずが、松陰に出逢ってから「至誠」に正しく感化されてしまったのであった。
その意味で松陰の著作になる「罪を憎んで人を憎まず」という考えを著述した『福堂策』そのものであった。
「人賢愚ありと雖も一二の才能無きはなし」である。沼崎が如何なる非人道的な行いをしたかは、今となっては詳細は分らないが、遠島、流刑という処罰は死罪に次ぐ重刑であった江戸期の刑罰からすれば、大変重刑罰であることは容易に察しが付く。 そのような人物が、松陰によって感化され、しかも「託された遺書」を20年間近く保持し続け、「男の約束」を果したことの心中に我々は思いを馳せるべきと思う。
25.06.03『遥かなり三宅島』留魂録外伝



このお陰で、後世の我々は松陰自筆の『留魂録』に接することが出来るのだ。
この『留魂録』は今、萩の松陰神社に保蔵されている。
セピア色になっているのは、単なる経年ではあるまい。
沼崎の誠を思いやらなければなるまい。
沼崎が、どのような思いで三宅島にてこれを保持し続けたか?
この思いを、小説形式に託して綴ったのが『遥かなり三宅島』の本である。


著者の永冨明郎さんは、山口県に生まれ育ったことはいうまでもないだろう。しかも現役の会社員であったことを考え合わせる時、吉田松陰への思いと、沼崎吉五郎へ馳せる思いは、我々の想像以上に執念を感じざるを得ない。史料の乏しい中を、沼崎への感謝に託して構想力をたくましくして書き上げたことの意味を、思いやらなければなるまい。
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