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「福澤諭吉と木村喜毅」
【2010/12/19 08:22】 エッセイ
幕府は、万延元年(1860)使節を米国に派遣することになった。日本初の太平洋を航海したことで有名な「軍艦・咸臨丸」はこの警護の役目でであった。その最高責任者は当時の高級旗本「木村攝津守喜毅」であった。福澤は蘭学での人脈から桂川甫周を通じて木村に米国行きをお願いする。そして木村個人の下僕ということで了解され、西欧文明に接する機会に恵まれた。これが福澤の生涯にとって、決定的な出来事となった。誰も志願する者のいない時代、命懸けに近い渡航の希望を木村の好意で受け入れてもらったのである。
福沢諭吉   木村喜毅4



この経験から福澤は大出世の運命が開けることになる。翌年「遣欧使節団」の一員としてヨーロッパを見聞、さらに慶應年間に再度の米国行きを経験。そしてこの間、幕臣(旗本)にまで出世したのであった。中津藩の下級藩士から奇跡に近い出世である。学問の修行で親元を離れることを、大きな母性愛で許可してくれ、励ましてくれた母の決断を忘れてはなるまい。兄の死去で福澤家の跡取りの立場にあったのであるから、これを受け入れた母の偉大さを思わずにはいられない。幕末に三度の海外往きを経験した結果、「西洋事情」はこの経験からの西欧紹介を意図しての出版で、当時の大変なベストセラーになる。

最初の渡米を受け入れてくれた木村の好意を、生涯福澤は「恩」として忘れなかった。美しい後日談を紹介する。徳川幕府の瓦解後、木村は官職につかず経済的に困窮する。幕末の裕福な大身の旗本だった恩人の困窮に対し、福澤は明治10年頃まで米と金銭を毎月贈り続けたという。明治の始まりから西郷隆盛の死ぬ明治10年頃までは、福澤の大活躍の時期である。さらに、時代は下って木村の子息浩吉が日清戦争に出征するとき、木村家の留守宅は福澤が力になる積りであるから心配なく軍務を果たすよう激励したのであった。万一、戦死に遭遇したら両親の世話をこの福澤が生涯を賭けて致す積りとまで言っている。この頃にも、盆暮れに金子(きんす)を贈り続けていたようである。

日清戦争の勝利後、浩吉は海軍中佐になっていた。木村家は経済的に心配ない状態になったので、此れまでの永年にわたる福澤の「恩返し」に対して浩吉が福澤家を訪ねて感謝と共に、辞退の申出をした時、福澤は血相を変えて「私の思いは、あなたの父上(喜毅)に心を尽すまでのことであると強い論調で、叱るかのような謂いだった」。加えて、福澤が言うには幕末に木村のお引き立てがなければ、以後の福澤の運命は全く異なったことだろう。だから、生涯心を尽しても尽しきれるものではなく、自分の心を尽すまでのことと諭した。

福澤の偉さはこういった孝心の実行にある。儒教を嫌いながらも「人の道」、「誠」を以て忠孝の心を保持し続けた人となりである。「封建門閥は私にとって親の仇」である言い放った怨念は「廃藩置県」、そして「日清戦争は文明の勝利」と在世中に経験出来て満腔の喜びを味わえた。家庭人としても幸せな生涯となったのである。更には「慶応義塾」が発展し、今日までの二度にわたる『福澤諭吉全集』が刊行され、夥しい「福澤研究」が全日本レベル今日まで続いている。明治このかた、これほど個人研究がなされた人物は福澤が最高だろう。「福澤研究センター」の刊行になる『福澤年鑑』や『福澤手帖』を見ると、その微に入り細にわたる研究実績の多さに驚嘆する。非売品なので一般人にはなかなか見る機会がないが、それはそれは大変なハイレベルの質と量の伴った研究書籍の数々である。今日の慶応義塾の隆盛を黄泉の国から悦んでいるに違いない。人生いろいろであるが、誠に幸せな生涯を送った巨人、それが福澤諭吉である。慶應義塾に学んだ人々の近代日本に果たした活躍は、官費で国策として教育した他大学と比べて、大いに誇るに足るものである。
 
今日は、木村喜毅とのご縁を契機とした福澤の出世の陰の「美談」の一部である。
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